
心 の 声
喘ぐような呼吸である犬が来院しました。2、3日前から調子が悪く、呼吸が荒く早かったようです。冬は気温が下がり、血圧が変動しやすいため、心臓病の犬には辛い季節です。
その子の肺も肺静脈の血圧が上がり、肺が浮腫む肺水腫という状態になっていました。肺音聴診時にはギユッギユッという握雪音が聞こえます。 苦しくてしんどいと言ってる声に聞こえます。飼い主さんに状況を話し、数日入院しました。
酸素チューブを鼻に通し、濃度の高い酸素を吸わせます。血圧を下げる薬も与えます。4日後、握雪音は聞こえなくなり、退院しました。それから3週間後、再び肺水腫です。
薬は飲んでいてもちょっとした事から血圧が上がり肺水腫を起こしたようです。
聴診では軽度な握雪音が聞こえ、苦しいと言っています。でも、前回とは異なり、もう飼い主さんから離れようとしません。早くに気づいたため、軽いようです。処置後、帰ることにしました。その後は1、2週間に1回は肺水腫が起こります。
心臓の働きも、日常生活についていけなかったのでしょう。ある日少し外に出た時、ショックを起こし、ぐったりした様子で駆け込んで来ました。数時間預かることにし、酸素を吸入させながら、昇圧剤を点滴して暫く付き添っていました。見上げるような目つきで、何か言いたそうな眼です。目が合うとその子は前足で処置台に置いた僕の手を軽く引っ掻いてきます。
何か訴えています。 「シンドイけど、カエりたい。」そんな風に聞こえました。
2日後、天に召されました。雪を握る音は苦しいと聞こえても、訴えかけられた心の声は想像でしか聞こえません。そう思ってよかったのか考えが巡ります。
コ ラ ム